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労働法の基礎知識

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解雇権濫用の法理

解雇権濫用の法理とは

解雇権濫用の法理とは、使用者が労働者を解雇するには、はたから見て合理的な理由が必要で、なおかつ、解雇まですることが社会一般的に相当な処置だと認められなければ、権利濫用として「解雇を無効とする」というものです。


解雇というのは、労働者にとっては、突然に生活の糧を失うという極めて重大事であり、生命権や生存権を侵害する虞もあるがために、使用者側の恣意的な判断のみに任せるのではなく、法による一定の制限が設けられている、ということです。


解雇の合理的理由とは

解雇の合理的な理由といえるものは、以下のようなものです。


  1. 労働者の労務提供の不能や労働能力、または適格性の欠如・喪失
  2. 労働者が労務の提供ができない場合、あるいは勤務成績・勤務態度の著しい不良や適格性の欠如など。
  3. 労働者の規律違反行為
  4. 業務命令違反や職場規律違反などで、本来懲戒処分の対象となるような場合です。
    例えば配転命令などの重要な業務命令違反、横領背任などの不正行為、上司・同僚や取引先に対する暴言暴行などの非違行為。
  5. 経営上の必要性に基づく理由による場合
  6. 事業不振などによる使用者の経営上やむを得ない事情に基づくもの。
    いわゆる整理解雇の場合などがこれにあたります。
  7. その他の事由
  8. 使用者と労働組合がユニオン・ショップ協定を締結している場合で、その労働組合の組合員が除名されたり脱退した場合に、ユニオン・ショップ協定の解雇規定に基づいて使用者が解雇する場合

なお、上記のいずれの「合理的な理由」に該当する場合であっても、「社会通念上の相当性」が必要です。


「社会通念上の相当性」というのは、解雇という処分をする事案の内容・程度が厳し過ぎないか、他の一般的な事案や処分と比較しても、充分な妥当性があるか、ということです。


解雇が正当と認められるための要件

  1. 客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められること
  2. 就業規則や労働協約に定めた解雇の事由に従っていること
  3. 労働基準法、その他の法律に定められている解雇禁止事由に該当しないこと
  4. 解雇の予告を30日前にするか、それに代わる解雇予告手当を支払うこと(例外有り)

整理解雇の四要件

「整理解雇」の場合には、上記の「正当と認められる要件」の他、【整理解雇の四要件】を満たしている必要があります。

これは、人員整理は基本的に、労働者に特別責められるべき理由がないのに、使用者の都合により一方的になされることから、必要性の判断には慎重を期すべきであるという理由に基づいております。


1.人員整理の必要性
余剰人員の整理解雇を行うには、削減をしなければ経営を維持できないという程度の必要性が認められなければなりません。
2.解雇回避努力義務の履行
期間の定めのない雇用契約においては、人員整理(解雇)は最終選択手段であることを要求されます。
例えば、役員報酬の削減、新規採用の抑制、希望退職者の募集、配置転換、出向等により、整理解雇を回避するための経営努力がなされ、人員整理(解雇)に着手することがやむを得ないと判断される必要があるということです。
3.被解雇者選定の合理性
解雇するための人選基準が合理的で、具体的人選も合理的かつ公平でなければなりません。
例えば、個人的な好き嫌いなどの恣意的な判断による選定は許されない、ということです。
4.手続の妥当性
整理解雇については、手続の妥当性が非常に重視されている必要があります。
例えば、説明・協議、納得を得るための手順を踏まない整理解雇は無効とされる可能性が高い、ということです。



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