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労働法の基礎知識

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普通解雇

普通解雇

普通解雇とは、狭義の意味においては、労働者の債務不履行を理由として、就業規則に定める解雇事由に該当する場合行なう解雇のことをいいます。


・出勤しない/出勤出来ない
・職務を遂行する能力が不足している
・非違行為や職務命令違反、などによる解雇


もちろん、解雇というのは、労働者にとって、社会的経済的に大きな影響を与えるものでありますから、解雇の有効・無効については、厳格に判断されます。


労働契約法 第16条
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」


普通解雇の妥当性を判断する基準

普通解雇の妥当性を判断する基準としては、「客観的な合理性」と「社会的相当性」があります。


普通解雇の客観的な合理性

普通解雇の客観的な合理性の判断基準は、以下の2つです。


①解雇理由として挙げられた事実が本当に存在するか
②会社が主張する事実の存在そのものは認められるとしてその事実が解雇理由に該当するか


普通解雇の社会的相当性

普通解雇の社会的相当性の判断基準は、以下の3つです。


①被解雇者の行為が本当に解雇に値するものか
②同一社内における同様のケースの処分状況と比較して均衡が取れているか
③労働者の勤続年数や生活状況、転職の可能性の有無


普通解雇に関する判例

普通解雇に関する主要な判例としては、以下のようなものがあります。


S48.3.23 東京高裁「静岡宇部コンクリート工業事件」 試用期間中の解雇

「試用期間中は前期のようなこれを置く趣旨に鑑み、右適格性等の判定にあたって使用者に就業規則等に定められた解雇事由や解雇手続等に必ずしも拘束されない、いっそう広い裁量・判断権(かような広い裁量・判断権を含む解雇権)が留保されているものと解するのが相当である。」


S59.3.30 東京高裁「フォード自動車事件」 能力不足による解

「外資系会社の最上級管理職のひとつである人事本部長の地位を特定して中途採用された従業員に対し、就業規則の解雇理由である「業務の履行又は能率が極めて悪く、引続き勤務が不適当と認められる者」を適用して解雇するには、他の職種または下位の職位に配置換えをするまでもなく、人事本部長という地位に要求された業務の履行または能率がどうかという基準で検討すれば足りる。」


S61.7.14 最高裁「東亜ペイント事件」 転勤命令拒否と解雇

「Y社の労働協約および就業規則には転勤を命ずることができる旨の定めがあり、従業員の転勤は頻繁に行われる実態があり、またXも入社の際に勤務地を限定する旨の合意が無かった事情の下では、使用者は個別的同意なしに労働者の勤務場所を決定することができる。
ただし、転居を伴う転勤については、業務上の必要性が存在しない場合、又は必要性があっても当該転勤命令型の不当な動機、目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合には、権利の濫用となる。
本件は、家庭生活上の不利益について通常甘受すべき程度であるから権利濫用にはならない。」


H2.4.27 名古屋地裁「名古屋埠頭事件」 心身の故障による解雇

「業務とは、雇用契約で従業員の職種が限定されている場合でも、その業務のみならず、使用者が従業員に就労を命じ得ることが可能な業務を含むと解すべきで、従業員の疾病の内容、特質、罹患後の長さ、最終的に当初の限定された職種に復帰することが困難であることが高度の蓋然性をもって予測できるときは、その解雇が合理的で有効とされる。
症状固定の状態(治療を継続しても医療効果これ以上期待出来ない状態)になれば、再就職の困難さという点についてもそれ以上の改善の見込が失われるのであるから、症状固定時以降は、再就職可能性の回復を期待して解雇を一般的に禁止すべき理由はなくなる。」


H3.11.18 最高裁「日立製作所武蔵工場事件」 残業命令拒否による解雇

「残業命令に従わなかった原告に対し被告会社のした懲戒解雇が権利の濫用に該当するということも出来ない。」


H5.6.11 最高裁「国鉄鹿児島自動車営業所事件」 業務上の指示命令違反による解雇

「命令を無視し、違反行為を行おうとしたため、職場規律維持の上で支障が少ない業務へ転換したことは職場管理上やむを得ない措置ということが出来、これが殊更被上告人に対して不利益を課するという違法、不当な目的でされたものであるとは認められない。」


H7.7.7 東京地裁「メディア・テクニカル事件」 勤務成績不良・能力不足と解雇

「たびたび業務命令を無視し、事務処理能力に欠け、勤務態度が劣り、その反省心が全くなかつたものというべきであるから、原告は、会社の就業規則28条 1 号の「業務能力又は勤務成績が著しく劣り、従業員として不適格と認められてとき」との解雇事由に該当するものであり、前記の事実経過のもとにおいては、会社が原告を同条項に基づき解雇したことが権利の濫用に当たるものとは認められない。」


H10.4.9 最高裁「片山組事件」 業務適正の欠如と解雇

「労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置、異動の実情に照らして、当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である。」


H11.10.15東京高裁「セガ・エンタープライゼズ事件」 人事考課を根拠とする解雇

「就業規則の『労働能力が劣り、向上の見込がないと認めたとき』との規定は、平均的な水準に達していないというだけでは不十分であり、著しく労働能力が劣り、しかも向上の見込みがないときでなければならない。
面接を受けた部署への異動が実現しなかった主たる理由は原告に意欲が感じられないなどといった抽象的なものであることからすれば、会社が雇用関係を維持するための努力をしたものと評価することはできない。」


H13.3.14大阪高裁「全日空事件」 休職後の解雇

「直ちに従前業務に復帰出来ない場合でも、比較的短期間で復帰することが可能である場合には、休業又は休職に至る事情、使用者の規模、業種、労働者の配置等の実情から見て、短期間の復帰準備期間を提供したり、教育的措置をとるなどの配慮義務が信義則上求められる。」


H13.8.10 東京地裁決定 「エース損害保険事件」 勤務成績不良による解雇

「長年勤務してきた者に対する解雇は、単なる成績不良では足りず、企業経営に現に支障や損害を生じまたは重大な損害を生じる恐れがあり、会社から排除しなければならない程度に至っていることや、是正のため注意し、反省を促したにもかかわらず、改善されないなど、今後の改善の見込みもないこと等を要する。」







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